やっぱり山の方とは降雪量が違い、さらっと雨が降ったくらいの路面状況。
ほんの数キロでずいぶんお天気が違うんだなぁ、というのが実感できる。
厚田はこの程度なのに、浜益に北上するとシャーベット状の積雪が6~7cmなのかぁ。
札幌に向けて進んでいくと、古潭、嶺泊、望来と どんどん空が明るくなっていく。
普通の濡れた路面だ。路肩に残雪が無い。
こっちはもしかしたら雪すら降らなかったのかもしれない。
ああ良かった、と思ったのも束の間、
聚富を越えたあたりから雲行きが怪しくなってきた。
石狩霊園から下りながら石狩平野を一望できる坂にさしかかると、
札幌の山々が雲に隠れており、札幌の街は白く煙っていた。
「わぁ、こりゃ石狩川の向こうは降ってるねぇ」と、好天を期待した淡い気持ちが萎む。
ステーションワゴン君に打ち付けるアラレ、というかもうこの音は雹かもしれないが、
バラバラバラと けたたましく音を立てる。
路面に丸い粒がコロコロと転がり、弾んで、けたたましい音が無ければ可愛い光景。
悪天候の中、給油して急ぎ札幌へ向かう。
札幌市内も みぞれ時々アラレ、という吹雪で、厚田よりも険しい天気だった。
今回の仕入れは30人前のオードブルの注文が入ったので量が多く、時間がかかった。
自宅用の買物もそこそこに、急ぎ帰路についたが、もうすっかり陽は暮れていた。
「帰り道は運転するよ」と夜道に弱い私を気遣ってダーリンが運転交代を申し出てくれた。
「偏光サングラスは?」
「レッカーされるといけないから、車から降ろした」
「余計見えないじゃないか~い」と少しおどけてくれたが
要らぬことをして、と思ったのか不満そうに見えた。
薄暗い帰り道を行く中、夜道が弱い私よりも更に見えていないのでは、と不安になった。
街灯の無い道ではセンターラインが見えないのか、時々反対車線にはみ出す。
センターラインが白い所はまだ見えるようだが、
追い越し禁止のオレンジのラインは黒い路面とのコントラストがはっきりしないらしく
ラインが認識できていないとしか思えない運転に恐怖感を抱いた。
「運転を代わってください」と言っても「大丈夫だよ」と優しい返答。
でも、でも、明らかに私より見えていない・・・。
路肩に寄り過ぎたり、センターラインを何度も踏む度に、ひいっ、と息を飲む。
対向車が来るたびに恐怖に身を硬くする。
だんだん怖くて涙ぐんできた。
「お願い、代わってください」・・・返答なし。
次に息を飲んだ後に、「どうして代わってくれないの!」と言ってしまった。
「うるさいな、もう! わかったよ!」と怒ってしまった。
本人は危うい運転だとは思っていないのかもしれない。
でも、怖い。こんなに穏やかで優しい人を怒らせてしまったことにも後悔しながら、
泣きべそをかきながら交代した。
どう声をかけたらいいのだろう。
しかも、代わった所で私だってクリアに見えている訳では無い。
とにかく事故なくおうちに辿り着かなくては。必死で目をこらしながら運転した。
無言の車内。運転と気まずい雰囲気に緊張しながら、
なんとか厚田の市街地まで辿り着く。
ああ、あとは慣れた道だ。後続車もほぼ現れないだろうから暗い道だけど、気が楽だ。
「ゆっくりでいいからね」
押し黙っていたダーリンが、声をかけてくれた。
怒っているだろうに、緊張して運転している私を気遣ってくれる。
なんだか、ありがたいやら情けないやらで更に泣きたくなってきた。
無事おうちに辿り着き、真っ暗な中で留守番していた子猫たちに声をかけながら
バタバタと荷下ろしをする。
子猫たちのごはんをあげて、一息ついたところでダーリンに謝った。
我慢したり、無理をして意地を張らないでほしい。
でも私の伝え方がおかしかったと思う。怒らせるような言い方をしてゴメンナサイ、と。
腑に落ちてはいないかもしれないが、それでもダーリンは穏やかだった。
子猫たちもダーリンの足元に集まって落ち着いた表情をしている。
改めて、ダーリンが居てくれて、子猫たちが居てくれて、
その存在を ありがたいと思った。
もう、夜の運転はしたくない。
今回はアクシデントがあって午前中から動けなかったが、
冬は午後から動くようなことは何としても避けなければ、と強く思ったのだった。
【関連する記事】